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ひとりひとりが輝けば、企業も社会も輝く

株式会社ファンケル

臼杵ひろみさん 「もっと何かできるはず基金」より、よこはまチャイルドラインにご支援いただいたご縁で、その後も企業説明会や講演会などでおつきあいが続いているのが、ここ横浜が誇る「株式会社ファンケル」です。今回は、山下町の本社で、3名のかたにお話を伺いました。
――いつもおせわになっております。最近の子どもたちの様子をみて、感じられることはありますか。


臼杵  そうですね、わたしたちが小さいころと今とでは、育て方も含めてずいぶん変わってきたなあ、というのが実感です。最近も大阪でとんでもない事件がありましたが、夜中に街中をうろうろしている子どもがいたら、見かけたおとながだれか声をかけなかったのでしょうか。残念です。いたいけな子どもを守れないのは、おとなの責任です。また、パソコンなどIT化も進み、子どもたちがカンタンに情報を入手できるようになり、子どもの世界と大人の世界が乖離してきたような気がします。子どもがこころも身体も十分に大きくなるまでは、おとなのまなざしが必要なのに。

臼杵ひろみさん ――臼杵さんの子ども時代のお話を聞かせていただけますか。

臼杵  わたしは東京生まれの横浜育ちなのですが、じつは親の仕事の関係で中学校はブラジルで暮らしました。いわゆる帰国子女なんです。 ブラジルはいいですよ、ホント明るくて、大好きです(笑)。移民の国なので、日系人も多いし、いろんな国のひとがいます。すこぶる人間的です。  高校入学を機に帰国しましたが、当初は日本社会になじめなかった。ブラジルは個性を大切にしますが、日本社会は協調性を大事にするんですね。だから、自分を主張しちゃ、いけないでしょ。たとえば、友だちとお茶を飲みに行く。そのとき、「何を飲む?」と聞かれて、「紅茶が飲みたい」とはっきり言うのがブラジル流。でも、日本では「みんなと同じ紅茶でいい」となる。ブラジルでは、自分の意見を持っていないと、「頭のなかはからっぽ」と思われます。
ところが、日本に帰ったら、真逆で、自分を主張してはいけないんですね。「出る杭は打たれる」んです。自分の意見を言うより、何もいわず、おとなしくしているほうがいいんです。そうしていれば、いじめられることもない。
 わたしも当時は孤立していました。親はまだブラジルに残っていたので、祖母と2人暮らしで、相談する人もいなかった。そうそう、ブラジルから帰国した友人15人のうち、すでに4人が亡くなりました。原因はわかりませんが、ストレスも相当あったと思います。
 そんなとき、もしチャイルドラインがあれば、どんなに救われたことでしょうね。

――ところで、「もっと何かできるはず基金」でチャイルドラインに支援しようと思った理由は何ですか。

臼杵 「人々が美しく健やかに過ごせる明日のために」という方針で生まれたのが「もっと何かできるはず基金」です。対象は、「地域とのつながり」「ハンディキャップを持つ方々との交流」なんです。よこはまチャイルドラインはここ横浜を拠点に活動されているし、チャイルドラインのお話をうかがって、今の子どもたちの現状をデータで示されたとき、ああこれはたいへんだ、普通に暮らしていると子どもたちのことはなかなか伝わってこないけれど、なにか深刻な事態が進行しているな、と思ったんですね。「子どもは社会の宝」なのに、子どもが元気じゃない社会に未来はないのに、これではいけないな、おとながもっと子どもにかかわっていかなくては、とね。
 それに、チャイルドラインが問題解決をするというより、「ただ子どもの話に耳を傾ける」活動であるということにも、意義を感じました。大人の価値観を押し付けるのでなく、子どもを大切にしているなあ、と思ったんですね。それでこそ、子どもは伸びやかに成長できるんです。

ファンケルオフィス ――ありがとうございます。活動の本質をご理解いただいて、うれしいです。さすが、わが横浜が誇る企業ですね。
 

臼杵 当社はひとにとって何がいいのか、ずっと考えてきました。約35年前は当たり前だった化粧品の防腐剤が化粧品公害として女性を苦しめているのなら、防腐剤の入っていない無添加の化粧品を作ろうと、最初は5ミリリットルのアンプル容器から始めたんです。素材が腐らないうちに使いきれるのが5ミリリットルだったんです。当時は、常識破りで、画期的でした。
 今は、技術の進歩で30ミリリットル容器になりましたが、とにかく「ひとにやさしい化粧品」を作ろうと努力を重ねてきました。ですから、社会貢献も歴史があり、当社のDNAに組み込まれていて、社員も「社会貢献するのが当たり前」と言う感覚なんです。これからもこの姿勢は、継続してキープしていきます。
 当社のCSRは、「環境活動」「社会貢献」「人権・労働・取引先」などがありますが、ただ表面的にかかわるのではなく、原料調達のところから環境や人権や平和といった観点を採り入れてビジネスをやっていく、ということを念頭に置いています。

横溝 今年から始まった「この指とまり隊」の活動は、当社の従業員が定年後を見据え、「地域社会で自分に何ができるか?」を在職中に模索し、社会に貢献できる個人になれるよう、ボランティア活動を推進していくというものです。

ファンケルのみなさん ――さすが、ファンケルさん、コンセプトがすばらしいですね。退職後のことも視野に入れるなんて。オールラウンドに人間を社会をみていく姿勢はすてきですね。 最後に、これからの夢や希望を聞かせてください。

臼杵 企業はひとの集まりです。ひとりの人間としてどう生きていくのか、どう社会に貢献していくのかという姿勢が大切だと思います。人間ひとりひとりが輝けば、会社も、そして社会もおのずと輝いていく。まずは足元から、企業でできることを追求し、だれもが幸せになれるような社会をつくっていきたいですね。
 もちろん、子どもを守っていくのは社会の役目ですから、これからも力を合わせていきたいです。
 個人的には、ちょっとのんびりして、ブラジルに帰りたいですね(笑)。

――――きょうはお忙しいなか、どうもありがとうございました。

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